
リブラ協会からビザやマスターカードなど5社が脱退表明、米議員の圧力が影響か
米SNSサービスを手がけるフェイスブックが中心となり立ち上げた、仮想通貨プロジェクトである「リブラ」。
その運営母体となるリブラ協会から、ビザやマスターカードなど5社が脱退を表明しました。脱退の背景には、米議員の圧力があるようです。
リブラ協会からビザやマスターカードなど5社が脱退表明
米フィスブックが中心となり立ち上げたプロジェクトであるリブラですが、その運営母体であるリブラ協会から5社が脱退を表明したことが複数のメディアの報告で明らかになりました。
脱退を表明したのは、ビザ、マスターカード、イーベイ、ストライプ、マーカドパゴの5社です。すでにリブラのホームページ上からも、これらの企業の名前が削除されています。
リブラ協会からは、先日ペイパルも脱退を表明しています。今回の5社と合わせると、合計で創業メンバーのうち6社が脱退を表明したことになり、残る創業メンバーはウーバーやボーダフォンなど22社になります。
特にビザとマスターカードは老舗の決済大手企業であり、世界中に顧客を抱えているため創業メンバーの中でも重要な存在でした。この2社の脱退は、リブラにとっては大きな痛手といえるでしょう。
脱退の背景に米議員の圧力か
フェイスブックがリブラのホワイトペーパーを公開したのは今年の6月です。半年も経過しないうちに、創業メンバー6社が離脱を表明したのは、ある種異例の事態といえます。
いっぽうで、フェイスブックが過去に起こした個人情報の流出事件から、規制当局を中心に、その信頼性に対して疑問を呈する声は発表当時から多く見受けられました。
また、今回の脱退の直接的な原因となったのは、米議員からの圧力のようです。創業メンバーでもあるストライプ社のパトリック・コリソンCEOは、米上院議員からリブラの参加に関する手紙を受け取ったと話しています。
手紙の一説には、「もしあなたがリブラのプロジェクトに参加するのであれば、リブラのプロジェクトだけでなく、あなたの会社のすべての決済業務に関して規制当局は厳しい審査を行うことになるだろう」と書かれており、参加に対して圧力をかけていたことがわかります。
他の仮想通貨への影響は?
いっぽうで、5社のリブラ協会からの脱退が表明されても、他の仮想通貨にはネガティブな影響は出ていないようです。ビットコインは脱退が発表された12日、価格の変動はほとんど起こりませんでした。
現在時価総額第3位のリップルにはむしろ追い風になっているようで、12日以降から価格が大きく上昇しています。
リップルは国際送金の課題解決を目的として発行された仮想通貨です。さまざまな企業や金融機関との提携で、大きな注目を集めています。
これに対して、リブラは個人間での送金を国境を超えてメールを送るのと同じくらい容易にすることを目指しており、リップルの発行目的とやや被る部分があります。
そのため、リップルにとっては大きなライバルの1つとして考えられていました。いっぽうで、脱退が表明されたことでリブラのプロジェクト自体が頓挫する可能性も出てきています。
ここ最近の価格上昇を踏まえると、リブラ協会からの脱退のニュースは、リップルにとってポジティブな材料として捉えられているようです。
リブラは2020年の発行に間に合うのか
リブラのホワイトペーパー(事業計画書)には、2020年に発行予定であることが記されています。いっぽうで、今回の5社の脱退や、規制当局からの厳しい圧力を考えると、当初の予定通りにプロジェクトを進行させるのは非常に難しいことが予想されます。
いっぽうで、リブラ協会への参加を希望する企業は多くいるようです。日本国内からも、マネックスグループがリブラ協会への参加を申請しているという報告が出ています。
マネックスグループの松本社長は7月26日の決算会見で、電子マネーやポイントが乱立する現状を指摘したうえで、リブラは外国人観光客向けに優位性があることを参加を希望する理由の1つとして挙げています。
ただし、今回の脱退表明を受けて、こうした企業の動きも先行きがわからない状態となってきたことも事実です。
果たしてリブラは成功することができるのか、今後の動きからもますます目が離せません。
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